組織行動心理(1):「見せかけの勤勉」の心理学的根拠

『「見せかけの勤勉」の正体』(太田肇)では次のように「見せかけの勤勉」を定義しています。

『小売業B社のC店は、全店舗のなかでも売上げが最悪だった。その主な原因は職場の人間関係にあった。店員はパートタイマーが主力だが、いたるところに仲良しグループができていた。昼時にはグループごとに食堂の片隅に集まって、ほかのグループの悪口や仕事のグチを言い合う。・・・・(中略)・・・・西村は店長に就任するとすぐ、店員に対して二つのことを約束させた。一つは、昼食はみんなで一緒にとること。もう一つは、言いたいことがあれば陰口をたたくのではなく、会議室に集まってみんなの前ではっきり言うこと。たったその二つを実行しただけで職場の人間関係は目に見えてよくなり、やがてC店は全店舗のなかで業績がトップに躍り出たのである。』(同著p85)

太田が指摘するのはリーダーの「やる気主義」が逆効果となっている現状があることです。そのために、いかに現場の”仕組み”の中にある「やる気を失わせているもの」を取り除くのか、そこに注力したことで改革が成功したというわけです。

一般の店舗ではリーダーが部下に「やる気主義」を教えようと努力し、その結果は表面だけの精神論でやる気を創り出そうとしてしまいます。現場にあるやる気をなくす”仕組み”を無視してしまっているからです。

この場合の事例でいえば、悪循環を生み出すものが「小グループに分かれて陰口を言い合う」という状況にあります。そこで「食べる行為」の場を利用して、皆が不満も言えるような仕組みを創ったところに解決の道筋があったといえるのです。

そして、この経営における「やる気主義」の自己矛盾は、学校における”いじめ”の「仲良し主義」と同じ構造を持つ問題なのです。どうしていじめを無くそうとしているのに、逆に増えてしまうのかという問題の根源にあるのは、やはり個人の”精神”にいじめの原因を求める「仲良し主義」にあります。

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