コーチング心理(2):「快善モード」

コーチング心理学の課題(2):「快善モード」

これからの豊かな「心の時代」を築いていくために、 ビジネスにおいてコミュニケーションと能力開発の2つの柱が重要です。そこでまずは心理学として手堅く効果をあげる方法は何かと問えば、「コーチング」ではないでしょうか。

そうした問題意識から10回ほどにわたりコーチングに関連する心理学の内容を整理していきたいと思います。
そこで、まずは仕事で活躍し生きがいを感じていくうえで不可欠なもの「快善モード」というテーマから検討してみましょう。

ここでの「快善」はポジティブ心理学の“快”と“善”を意味するものです。そこにトヨタのカイゼンの考え方を組み込んで実践的な意味を加えたものです。本来、トヨタ自動車のカイゼンは日常の仕事をどう工夫し常に良くしていくかを考え行動する原則として機能しているコンセプトです。その原則はトヨタという価値を創りだす源泉でもあるわけですが、そこにはただ良くする便宜上の仕方以上の内容があります。

それはカイゼンを“危機感”をベースにしていることです。興味深いのはポジティブな危機感ともいうべき感情要素を含む内容にあります。自己と組織の強みを活かす面とこの危機感が結び付いたところにトヨタのカイゼンという行動原則が働くというわけです。

たとえば「多工程もち」という仕組みの考えは、トヨタの社員に複数の工程を持たせることです。その仕組みによって、常識では得られない工夫や柔軟な思考と対処の仕方を学ぶ力ができることをねらいとしています。トヨタのカイゼンに求められるのは、効率性だけでなく同時に学習性の高さであり、そこに人の成長をみるというのです。そして、言われたことをやるのではなく、付加価値を高める知恵を出すことだというのです。

もうひとつ例をあげると、「ムダをなくす」ということにそのカイゼンの考え方のユニークな特徴をみることができます。ムダとは、作り過ぎ、打ち合わせ、移動、在庫、動作、紙など資源、やり過ぎなど。

しかし、とくに問題なのは「やり過ぎ」だというのです。さらに、カイゼンの要となるのが「標準作業」を決めることです。それを決める作業の中で逆にムダを浮きぼりにできるという見方をするのです。そのため標準作業のマニュアルを作ることも、一般のマニュアルのように使われるものではなく、現場の人が自ら書き換えながら作るものとなります。

※【執筆;匠英一】

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