マネジメント心理(7):ドラッカーの”営業力”説(その2)

■営業力を問う(その2)

「売上」を上げることだけに関心が向いてしまうと、大きな落とし穴にはまるリスクがあります。
まずその第一の落とし穴は、販促費など費やして集客をすれば売上が上がると思い込み、POS情報など分析させて顧客のターゲットを決めるといったよくある販売方法の問題です。

確かに顧客を知る必要はありますが、このPOSデータなどを活かすのは本来現場の責任者らがどういう商品・サービスの企画を創るかにかかってきます。顧客のターゲット等はあくまで過去の情報による過去の商品・サービスへの評価であることです。

そこには、現在から未来にかけて何を消費者が求めているかは示されてはいないからです。過去の足跡をたどれば、これからの未来の道筋が見えるというのは今の激しい変化の時代ではますます危うい考え方になっているのです。

セブンイレブンの鈴木敏文会長がよく言うのは、情報をただデータから集めるのではなく、まず在りたい姿が何かを描くということ、つまり、この先にある顧客の動きを予想するための「仮説検証」の大事さです。

具体的な例をあげれば、地方の中堅スーパーなどで、まず各現場の店長が自分の責任として売上の仮説モデルを創るのです。そのためには、例えば店長キャラクターをPOPのカードに描き、「店長お薦め」といった形で来客者の目につくようにします。そうすることで、その店舗の商品の訴求すべき内容を店長みずからの“顔”で顧客に伝える場が生まれます。そこが心理学的には重要なのです。

店長はその店の管理者という意味ではなく、あくまで顧客に対する価値の提案をする顧客に責任を持つ者ということです。それを店長がするには、当然ながら売っている商品の評判や品質を常に理解するために情報収集もしておく必要があります。顧客の反応を自らが正確に理解することが最優先だからです。

そのうえで、どんな販促や商品企画が必要かを発想しなくてはなりません。この能力は現場にいる自らのスタッフらと「共創」していくものなのです。

【執筆:匠英一】

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